【天使の片翼】


いつの間にか、うっすらと月が顔を出している。

シドの隣で、猫のように輝く瞳が、月に負けぬ強い光を放った。


「どういう意味だ?」


見当もつかぬファラの言葉は、シドの頭を混乱させた。

意味はわからなくても、イリアの不幸を暗に自分のせいだと告げられたのはわかる。


「イリアさんは、シドに生き延びてほしかったのでしょう?

だから、シドを庇ったのに。

なのにシドが幸せに生きてくれなくちゃ、イリアさんは、ただの犬死になっちゃうよ」


しゃくりあげながら、それでも意思の強さを感じる口調で、

ファラの小鳥のような声が、シドの胸をえぐる。


「ばかばかしい。人の死に意味なんかあるか。どんな死もただの死だ。

それ以上でも以下でもない。イリアはお前の父に殺されたんだ。

イリアの死を犬死と呼ぶなら、それはあの男のせいだろう」


「そうかもしれない。

けど、私はあなたに死んでほしくない。イリアさんもきっとそうだと思う」