【天使の片翼】


ふと、泣き声が聞こえた気がした。

耳を澄ましても、虫の鳴き声一つしない。

だが、シドの五感が、そう訴えかけてくる。


「泣いているのか」


隣にいるファラに声をかけるが、返事はない。

沈黙は、肯定と同じだ。

シドは、苦笑した。


「自分の父親が、人殺しだったのを知って辛いか」


可愛がられて育った分、衝撃も大きいだろう。

だがファラは、嗚咽を隠して、いいえ、と答えた。


「イリアさんが、イリアさんがかわいそう・・だから」


「そうだな。この世の中の楽しみも知らずに、死んでしまったからな」


遠い目をしたシドに、だが、ファラははっきりと否定の意を告げる。


「ち、がう。

イリアさんがかわいそうなのは、シドの魂が救われないから。

シドが幸せじゃないから」


話の流れが断ち切られて、シドは眉根を寄せる。



・・俺の魂が、なんだって?