【天使の片翼】


表通りを一本入った、脇道。


剣の柄に手をかけ、腰を落として、慎重に近づく。

犬や猫にしては、大きい気がする。


気配を殺して、様子を窺っているようなその感じは。



・・間違いない。人だわ。



ファラが、さらに一歩足を踏み出した瞬間、暗闇から影が分離して、

あっというまに、自分の目の前に、それが現れた。

まるで、無から有が生まれたかのごとく速さで。


剣を抜く暇もなく、ファラは、その影に捕らえられた。

片手で腰を抱えられ、片手で口をふさがれる。


息が、苦しい。


「ふんんんっ!」


体が密着しているせいで、剣を抜くことが出来ない。

なんとか、腕をはずそうともがくが、もの凄い握力だ。


顎が割られそう、と思ったとき、集団の足音が、すぐそこまでやってきた。


男がそれに気を取られ、手の力を緩めた瞬間、

ファラは、その手に思い切り噛み付いた。