【天使の片翼】


言葉にすれば、ただそれだけの出来事。


敵の兵士に会った。

立ち向かった。

殺された。


ものの数拍で語られてしまう。


けれど、そこにいた自分たちにとって、それは物語りでも歴史でもなく、

立ち向かうべき現実だ。

いくら細かく描写をして、辛い気持ちを語ったところで、

他の誰にも、自分の気持ちを理解してもらうことなんてできはしない。


自分以外の誰かに、自分を肩代わりしてもらうわけにはいかないのだ。

だから、余計に、過去を語ることはむなしい行為だと思っていた。


なのに今、シドは心が軽くなったような感情を覚えて、戸惑った。

この気持ちは何なのか。

対峙してはいけない何かが、心に芽生えている。


それは、閉ざしてしまった自分の心の封印を破る鍵なのだろうか。



・・いいや、違う。

俺はだんじて、復讐をあきらめたりはしない。



憎しみが、時の流れに負けるはずない。

何度もくじけそうになった心に、繰り返し言いきかせたように、

再び自分を奮い立たせる。