【天使の片翼】


怖いくらいに、冴え冴えとしている月を見て、ファラは、無意識にぶるっと震えた。

まるで、狂気に満ちたような、妖しい輝き。



再び、涙がにじみそうな気配。

ファラは、もう一度、寝台に横になろうと、踵を返した。


ただでさえ、十人並みの自分の容姿だ。

腫れた目などで、城に上がれば、皆が恥ずかしい思いをするだろう。



・・お姉様は、あんなに美人なのになぁ。



自分は、母に似ているとよく言われるが、それは、母と同じ色の髪の毛のせいだろう。



・・だめだめ!前進あるのみよ!

お父様は、私のとりえは、無鉄砲なところだって、おっしゃってたもの。



すばやく、頭を切り替えて、部屋の中に足を踏み入れた瞬間。


なにやら、大勢の足音が、階下から聞こえてきた。


『貴様!待てぇっ!』


『逃がすな!!』


などという、罵声を引き連れて。