【天使の片翼】


しかし今回、自分の後ろには、モーリタ国がついている。

そして、そもそもの王位の正統性という観点から言えば、こちらに分がある。


妹のためでもなんでもなく、老い先の見えてきた自分自身のために、

ルビドは、カナンの地を欲していた。



・・しくじったところで、ソードが親の復讐に王女を殺して、自らも命を絶ったことにすればいいだけだ。



カナン国の王位継承を巡っての悲劇。



・・どちらに転んでも、悪くはならないはずだ。



商人気質らしい腹黒さをのぞかせて、ルビドはにやにやと笑った。


勝てば、カナンの全てを、引き分ければ、同情を。

負けは、ない。


ルビドは、脂肪でつぶれてどこにあるのかわからない顎を、せいいっぱいしゃくりあげた。


「行け!

しくじるなよ、シド」


はい、という声の直後に、シドの姿は闇の中へと消えていった--。