藍鼠色の空の中に、まるで蛍の光のように、小さな灯りが点々と灯っている。
その中で、ひときわ存在感を放つ、月明かり。
・・今夜の月は、なんて、大きいのかしら。
ほんのわずか、水平の位置から目線をあげるだけで、
存在を主張する輝きが、目の端に飛び込んでくる。
ファラは、空を見上げて、視界全体が歪んで光ったとたん、慌てて鼻をすすり上げた。
手の甲で、ぐいと涙をふき取ると、すぐに唇を真一文字に結ぶ。
自分が不安に思っていることなど、誰にも悟られてはならない。
不安は伝染する。
自分についてきてくれた兵士のためにも、
自分は、気高きカナンの王女でなくてはならないのだ。
・・父様。
ファラは、呪文にも似たその響きで胸を満たすと、少しだけ気分が晴れた。


