やけに、空気が纏わりつく。
体が、重い。
レリーは、木の幹に手をついて、全身を支えた。
額と脇の下に、嫌な汗をかいている。いや、全ての穴という穴から粘り気のある汗を。
「君の母上も、カナン国の人間だろう。
だったら、カルレインという人物がどういう人間か、よく知っているのでは?」
レリーの動揺を見抜いて、シドはもう一押しとばかりに口にした。
カナン国のカルレイン王は、今でこそ賢王として知られているが、
もともとその東にあるノルバス国の王子だ。
強大な軍事国家であるノルバス国は、その軍事力でカナンに攻め入り、
当時の国王と妃を排除した。
その攻撃の指揮官であったカルレイン王子が、
カナン国の王女であったリリティスを娶ってカナン国王に即位した、という経緯がある。
レリーは、母親から、それを子守唄のように聞いて育っていた。
同じ事をもう一度やらないと、誰が証明できよう。


