【天使の片翼】


ソードが助かる唯一の方法。

それが、降ってわいたファラとの結婚話であった。


カナン国という後ろ盾を得れば、一気に戦況がひっくり返る。

たとえ、ホウト国の王になれなかったとしても、

友好関係を保たねばならないカナン国出身の妃を持てば、無下な扱いはできないだろう。


「どうして、ソード様を助けるなんて話になるのか、理解できません」


見た目は今にもつぶれそうな華奢な少女から発せられた言葉は、

刃の切っ先のように鋭い。

シドは、わずかに眉をひそめたが、

駄々をこねる子供に言い聞かせるように、優しい声音で囁いた。


「ホウト国を手にしたカルレイン王が邪魔なのは、誰だと思いますか?」


息づかいが感じられそうなほどの距離で、シドは、繰り返した。


「残りの8人の王子を追放し、いや、あの残虐な王なら殺してしまうだろうが。

そうして、ホウト国を手にしたカルレイン王が、

その次に邪魔になるのは・・・、


一体、誰だと思いますか?」