【天使の片翼】


シドの大きな体の影が、さらに大きなカリプタスの影に呑み込まれる。


「レリー。実は、あなたを見込んでお願いがあるんです。

ソード様を助けるために、どうしても信用できる人間が必要で」


「ソード様が、どうかなさったのですか!?」


ソードの名前が出て、警戒の緩んだレリーに、シドはたたみかける。


「カナン国のカルレイン王をご存知でしょう?

ファラ様のお父上にあたる方です」


もちろん、と答える代わりに、レリーは頷いた。

しかし、それがなんだというのか。自分の聞きたいのはソードの話なのに。


腑に落ちないという表情を見せたレリーに、シドは真剣な表情を作ってさらに近づいた。


声を潜め、それが秘密の話である事をにおわせる。

レリーの小さな心臓が、急に大きくなったようにどくどくと躍動した。


「実は、そのカルレイン王が、このホウト国を狙っています。

そのために、布石を打ってきました。


まずは、自分の娘をソード様と結婚させて、それからルビド王を亡き者とする。

そして他の王子たちを蹴散らして、ソード王子を王につけるつもりなのです」