【天使の片翼】


唇に血がにじむほど強く自分を押しとどめたが、

あふれる感情は制御できず、ファラの睫が湿り気を帯びる。


「ファラ」


ふいに、穏やかな太陽で照らされた気がした。

包み込むような、心に響く声。


「ファラは、悪くない。

大丈夫だ。ファラは、悪くないから」


ソランの手が頭にかかり、ゆっくりと前方に引き寄せられる。

厚い、胸板。

何度も繰り返す台詞と、頭を往復する手の形。


その温もりに誘われるように、ファラの瞳から、勢いよく涙が溢れ出した。

雨で水位の上がった川が、一気に氾濫したように。


大丈夫だ、と言いながらソランの掌は、頭や肩を何度も何度も優しく撫でていく。

何も考えることができず、ファラはしばらくの間泣き続けた。


途中、声に気づいた侍女が部屋に入ってきたが、

何も見なかったふりをして、そのまま出て行った。