【天使の片翼】


ファラが驚いて顔を起こすと、ぽろぽろと涙をこぼすレリーと目が合った。


「いつも笑って、そんな事を感じさせませんけど、

ソード様は、王子として認められるために、他の方の3倍は努力をされてきたのです。

頼る方もなく、たったお一人で。


やっと、やっと心を許せる方にめぐり合えて、

お幸せになろうというときになって、いまさら結婚できないだなんて。


私、私は、ソード様がお幸せになれるならと思って」


涙と嗚咽が邪魔をして、レリーはそれ以上言葉をつむげなくなった。


いかに、鈍感なファラでも、彼女の言葉の先がわからないわけはない。

彼女に近づこうと、震える足をぎこちなく動かした。


しかし、ファラがレリーの細い肩に指をかけようとした瞬間、

レリーは、一歩後ずさり、拒絶するように背を見せた。


「申し訳、ありません。

侍女の分際で、生意気を申しました。

頭を冷やしてまいります」


言い終えたときには、レリーの体はすでに走り去っていた。

パタパタという落ち着きのない足音。

バタンと乱暴に閉まる扉。