【天使の片翼】


ソードの両親が誰かを聞けば、おそらくその答えは見つかるのだろう。

けれど、ファラはそれをしたくなかった。


自分で調べろ、そうシドは言ったけれど、ファラは迷った末誰にもそれを尋ねなかった。

侍女に訊けばすぐに分かる話だろう。

でも、ソードにとっては、知ってほしくないことかもしれない。

自分の本当の両親が、誰なのかを知られたくないように。


「ねぇ、ソラン。前に言ってたわよね。

この国では、王様がお妃様を大勢娶って、たくさんの子供を作るって」


いまだ、頬を机に沈めたままのファラに、ソランは頷いた。


それは、ホウト国の古くからの慣わし。

能力のある跡継ぎを次の王にするために、すぐれた子供しか、王子として認めない。

第一王子であることが、次の王への必要条件ではなく、

王子として認められた瞬間から、誰もが同等の王位継承権を有する。


「きっとソードはあの笑顔の裏で、誰にも負けないほどたくさんの努力をしてきたのよね」


そうこぼした瞬間、


「それがわかっていながら、なぜっ!!」


静かな室内に、レリーの叫び声が、突然雷鳴のように轟いた。