【天使の片翼】


「うん。そうよね!ありがとう、ソラン!」


ファラの輝くような笑顔に、ソランは、ほんの少し、顔を赤らめた。

泣かれるのは、もちろん困るが、笑顔もなんだか少しだけ、困る。

胸の鼓動が、せわしない。


「あぁ、早く父様に会いたいなぁ」


ファラは、再び椅子に腰掛けると、両足を子供のようにばたばたとさせながら、

嬉しそうに、微笑んだ。


笑顔の理由は、自分ではなくカルレイン、だ。

そのうち彼女は、ソードに対して、父に向けるのと同じ笑顔をしてみせるのだろうか。

それとも、もっと極上の笑みを?


ソランの胸が、ちくりと痛みを訴えたが、無視するよりほかなかった。


もしも自分が、王族に生まれていたなら。

もしも彼女が、王族でなかったなら。


この場合、仮定は全くの無意味だ。

未来の仮定ならば、努力しだいで何とかなる可能性もあるだろうが、

過去の仮定だけは、どうやったって覆るわけがない。


ましてや、生まれの話など。


ソランは、今までに百万回考えたことを、もう一度考えてしまった自分に、ため息をついた。

それでも、多分、百万一回目のため息をつく日が、やってくるのだろう、と思いながら。