【天使の片翼】


ファラは、手を抜くことなく、次々と剣を繰り出した。

ソードは、ファラの動きに翻弄されて、防戦一方だ。



・・ちっ!ちょこまかと!



適当に痛めつけて、笑ってやろうと思っていたソードの目論見は、すっかりはずれ、

いまや、己の名誉のために、がむしゃらに戦う羽目に陥っている。


ホウト国の誰も想像しないが、ファラは、森の中で育ったと言っていいほど、

毎日城から抜け出しては、野山を走り回って過ごした。


そのため、体力的にも、標準の女性--特に、城にあがっている侍女などとは、雲泥の差があるのだろう。


先に、へばったのは、ソードの方だった。

足元がふらつきかけているのを、ファラは見逃さなかった。


その膝元へ剣をのばすと、それをよけようとしたソードが平衡感覚を失い、

しりもちをついて、地面に倒れた。


一瞬、何が起こったかわからないその場に、静けさが流れる。


まさか、王子が負けた?!


誰もが、そう感じたとき、一人の人間の拍手が、沈黙を打ち破った。