【天使の片翼】


「素晴らしい腕前ですね。

手加減したら、私の方がやられてしまいそうです。

こんな風に、私は、一生尻に敷かれるのかな。ねぇ、皆」


ソードは、にっこり笑いながら、周囲にいる人間たちに同意を求める。

彼の焦りなど理解できない侍女たちは、くすくすと笑い、

兵士たちもまた、眉をへの字にまげて困ったように苦笑いを浮かべた。


「では、続きをどうぞ。ファラ様」


穏やかな口調は、いつもと何の変わりもないが。



・・目が笑ってないわよ。王子様!



ファラは、ソードの左側に体を運ぶと、そこから足元をめがけて、

低い姿勢から、何度も剣を振るった。


毎日ソードの練習を見ていたので、彼の戦いぶりや、癖も、

ファラの頭の中には、しっかり残っている。



・・左からの攻撃に、かなり弱いのよね。



誰しも、利き手の側に弱点があるものだが、

左利きのソードは、左からの対処がまったく苦手なようだった。


ほんの少し、卑怯な気もしたが、自分と全く向き合おうとしない、ソードが悪いのだ。