【天使の片翼】


いつもなら、そこで、笑顔を残したまま立ち去るはずのソードのこめかみが、

ぴくぴくと震えている。



・・いいかげんにしろよ、このババア。

二度と、俺の前に出れないようにしてやる!



「では、美しい私の婚約者の望みにお答えして、

少しだけ、剣のお相手をいたしましょうか?」


天使のような微笑みに、周囲にいた侍女たちが、またもや、きゃ~という悲鳴を上げた。


「ファ、ファラ様!危ないです。

せめて、ソラン様がお戻りになってからにした方が・・・」


ただ一人、ソードの笑顔ではなく、言葉を頭にとめた侍女のレリーが、

不安そうな顔を浮かべて、ファラを見上げる。


「だからいいのよ!ソランがいたら、頭ごなしに、だめって言うに決まってるもの。

大丈夫。そんなに激しいことはしないから」


片目を瞑ってみせるファラに、レリーは、それ以上強く言えずに、俯いた。