「……見つっ、けたッ!!」

「おわっ!い、諱花!?」




あれから大分校内を走った。
私、運動得意じゃないんだけど…!

授業で持久走やった時みたいに、歯の根が浮つくような違和感が気持ち悪い。
いつもの倍以上の頻度で空気が行き来した喉はヒリヒリして狭苦しい。


俊介は、保健医が留守になることの多い保健室にいた。

1番奥のベッドに足元にいつも持ってる旗を放ったまま寝そべっていたから近付いたらすぐわかったけど、俊介に保健室が結び付かな過ぎて盲点だった。


私に見つかった事に気付くなりベッドの上に土下座する。

顔は見えない。けど見える首筋や耳は真っ赤だ。



「ごめん!
なんか俺、わけわかんなくなっちゃって…」



土下座する俊介を見下ろす、立ったまま腕組みをする私。
第三者から見たら完全に主従的な誤解を受ける図だ。



「…私さ、高校入ってからすっごい大事な人が出来てた事にやっと気が付いたんだ」

「えっ!?それって…」

「うん。まごうことなき好きな人」


いつになくきっぱりと言い放った私の言葉に一瞬、がばっと顔を上げた俊介は酷く複雑そうな顔をした。

勘違いしてる勘違いしてる。




「お、俺っ応援する!!」

「もっちろん。
よろしく頼むよ。それと…」


すっと歩み寄り勢いでその頬にキスをする。
ワックスのついた少し傷んだ金髪が顔に触れる。
やっぱりと言うか何と言うか、唇が触れた俊介の頬は少し熱かった。
ポカンと私を見る俊介に思いっきり笑いかけた。



「覚悟しててよ?」






それを聞くなり頬を押さえて真っ赤になる俊介に、私は恥ずかしさより弾むような嬉しさが湧いてくるのを感じて、心底おかしくなった。