その頃、拓哉は1人琴音の到着を待っていた。

頭上に煌めく大星団が淋しさを余計にあおるのは、拓哉に不安以外の気持ちがないからに他ならなかった。

「……あん時の白鳥の顔……淋しげだったな。」

この勝負を持ちかけてきた時の優斗の表情が、今になって何か気に掛かる様になった拓哉は立ち上がる。

そして、山を下っていくのだった。



「最近のあいつの、突っ掛かり様がなんか妙なんだよな……」

池の畔を歩き考えていた拓哉の目の前で2つの影が揺れた。

「カップルか?夜遅くにご苦労なことだな……ん?」

前方にいた2人に気付き拓哉は、近くの木の影に隠れた。

バクバク。と音を立てる心臓をなだめる様に、拓哉は胸を押さえる。

「なんで、白鳥とあいつが一緒にいるんだよ!?」

違う場所で琴音を待っているのだから、いるはずのない優斗の姿。

拓哉は驚きを隠せないでいた。

「…………。」

そして、不謹慎と自覚しながらも2人の会話に耳をひそめるのだった。