裏山を登っていく。
いくら車道が出来ていても急斜面を登るのは楽ではない。
街のまばらな灯りを下に見ながら、私はずっと上り続けた。
「よし、階段登りきったぞ。」
山の上は本当に空気が澄んでいる。
あまりにも透き通った空は、星まで手が届きそうで、私は手を伸ばしてみる。
「……星に手は届かないと思うな。」
「――えっ?」
山の上の池の向こうから居るはずの無い人の声が聞こえて、私は振り返える。
「何で優斗がここにいるの……?」
「…………。」
優斗は何も答えない。
でもいつもよりずっと、ずっと悲しそうな顔で私を見ていた。
優斗は黙ったまま私に背中を向けて何歩か歩きだした。
そして振り返って、叫んだ。
「織姫星ーーっ!!」



