教室に戻った優斗とすれ違うことなく、私は拓哉の元にたどり着いた。

雨がうるさい。

「……拓哉。優斗と何の話してたの?また、喧嘩なんてしてないよね……?」

拓哉は私に振り返ってはくれない。

ずっと雨を見ているみたいだ。

ううん、きっと違う。

雨の向こう側にある空を眺めているんだ。

「喧嘩なんかしてねぇよ。アホみたいな話はしたけどな。」

雨粒でわずかに濡れている手摺りに頬杖をついて、拓哉は小さくそう言った。

「アホみたいな話?」

そして私の質問に、ようやく拓哉は私に振り返った。

私はすぐに気付いたんだ。

今までに一度も見たことのない拓哉の表情に。

「別に。……なぁ明後日ヒマか?」

「へっ……うん、学校終わってからならヒマだけど。」

拓哉にそんなこと言われて私の頭の中はプチパニックになっていた。

「裏山のベンチに夜の11時に来てくれないか?流星群が見えるらしいんだ。」

こ、これって――

まさかの拓哉からのデートの誘い?

『この愛が届くまで……』

その時、私の携帯電話が鳴った。