灰色の景色が私の胸をざわつかせる。

(……私、どうして拓哉にキスのこと言ったんだろ。)

こうなることは分かり切っていたのに。

ただ、どうして?


今こうして目も合わせてくれないのに、不機嫌そうなその顔に救われている。



「琴音。放課後ちょっと話があるんだけど良いかな?」

「へっ!?あ、優斗。」

いつの間にか一時間目の授業が終わっていた。

そしていつの間にか目の前には優斗が立っていた。

優斗の顔、見れないよ。

「話聞いてくれてた?」

「あ、うん放課後だよね。良いよ。」

「そう、良かった。じゃあ放課後。」

それだけ言って優斗は自分の席に戻っていく。

優斗の声があのキスの感触を思い出させて、私は恥ずかしくて俯いた。

そんな私のことを拓哉が見つめていたなんて気付きもせずに。