「最近さ鷲尾が元気なくない?琴音なにか知らないの?」

拓哉はいつも通り机で居眠りをしている。

前の授業のノートを開きっぱなしで、そこに顔を埋めて。

「亜希もそう思う?うちのママもそう言ってたんだけど……」

「うん、何か悩んでるっていうか踏み出せずにいるっていうか、そんな感じに見える。」

「踏み出せずにいる?」

拓哉は私に悩みや愚痴を話してくれない。

いつも何の相談とかもなく新しいことを始めてたりして、私は後から驚くのだ。

「寂しい?」

「――えっ?」

急にそんなこと言われて、私には何のことを言われているのかが分からなかった。

亜希はちょっと呆れたような顔で言う。

「相談とかしてもらえなくて寂しがってる。そんな顔してるよ今の琴音。」

否定できなかった。

きっと図星だったんだと思う。

そう思ったら、昨日の拓哉の背中が少しだけ……

ほんの少しだけ寂しそうだったような気がした。

「聞いてみたら良いじゃん。何悩んでるの?って。」

「たぶん拓哉は教えてくれないよ。今までだってそうだったもん。」