県大会当日。

部は騒然としていた。

「どういうことだよカンペー!!」

部員がカンペーに詰め寄る。

私はただそれを生気もなく見ていた。

「白鳥のたっての希望だった。あいつは今日、父親の転勤で韓国に発つ。」

カンペーは真剣な表情で、物言わせぬ顔をしていた。

拓哉は無表情でカンペーを見つめていた。

怒りよりも喪失感の方が断然多いのだ。

最愛の恋人を一瞬にしてなくした私と同じで、拓哉もまた最良の親友を一瞬にしてなくしたのだから。

「白鳥からテニス部への伝言を預かっている……」

カンペーはふと私の方を見て、哀しげに笑った。