Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜


ポツ。

「ん?雨かな?」

一滴の雫が頬に当たったのを自覚した瞬間。

ザァァァァアッ。と音をたててどしゃ降りの雨が降り出した。

「急いで荷物持って玄関集合!!」

一瞬にしてコートには水溜まりが出来た。

みんなが手分けしてパラソルや救急セット、ウォーターサーバーを持っていってくれた。

「かぁぁ。マジついてねぇ、今日オレ傘持ってきてねぇよ。」

びしゃびしゃに濡れながら、止みそうにもない雨雲を見て拓哉が叫んだ。

「降水確率80%だったろ?なんで傘持ってこないのさ。」

呆れて優斗が聞く。

「だって晴れてたじゃねぇかよ。さっきまで。」

拓哉って意外と感覚人間だったんだな。と思った。

「……琴音は?傘持ってきてる?」

「うん、あるよ。」

優斗は拓哉を見る。

その視線が何だか悲しげで、私の胸がズキッと痛む。

「なら、拓哉入れて帰ってあげてよ。僕これから間先生と打ち合わせあるから。」

「あ、うん。良いけど……」

「宜しく。」

そう笑って優斗が校舎の中へと消えていく。

「……ま、待っ」

「白鳥ぃ!!」

不安になって呼び止め様としたけど声にならなかった。

でも、そのことに気付いてかは分からないけれど拓哉が優斗を呼び止める。

「関東大会。部のやつらも、へたれたマネージャーと顧問も絶対に連れていくぞ。」