「……優斗、気分悪いの?大丈夫?」

心配で見つめる私に優斗が微笑む。

「急いで来たからちょっと疲れているだけだよ。ありがとう。」

「……そう。」

うん。いつもの優斗だ。

「おら、コートでいちゃつくな。さっさとアップ始めるぞ。」

拓哉が優斗を引っ張る。

「あれ?拓哉分かってたの?」

「うるせぇ。」

「悪かったね……抜け駆けみたいな真似して。」

声のトーンで分かった。

「……うるせぇ。くだらねぇことしやがったらぶっ飛ばすからな。」

晴天だった空を少しずつ雲が覆いはじめる。

「うわ、雷雲だ。雨降らなければ良いけど……」

私は念のため倉庫にあるパラソルを取りに行った。

「あ、カンペーだ。」

カンペーは体育館の裏手でタバコを吸っていた。

私はゆーっくりと近づき、背後からささやく。

「うちの学校は禁煙ではなかったですかな間先生?」

「げっ!!うわ……ってなんだおまえか。」

「別にチクったりしないから消さなくて良いのに……何してんの?」

カンペーは携帯灰皿を取り出してタバコを消した。

「別に何でもないんだ。ただこの時期になると、やっぱり少し寂しくなるもんなんだよ。教師ってやつはさ。」

カンペーが校庭を見渡して私は初めて気が付いた。

ほとんどの部活が練習していた校庭。

今は陸上部と女子バレー部しかいない。