その夜。
なんだか慌ただしい優斗の家に一本の連絡が入った。
「もしもし白鳥ですが。」
電話に出たのは優斗だった。
どうやら家族は今、電話に出られないらしい。
「もしもし白鳥か?オレだけど。」
電話の主に優斗は受話器越しに笑顔を見せる。
「拓哉!やぁ、どうしたんだい?」
後ろから聞こえるバタバタとした音を気にしながらも拓哉が言う。
「来週の総体でオレと組んでくれないか?」
優斗は何も答えない。
「練習に出なかったことも、テニスをバカにする様なことを言ったのも謝る。悪かった……」
人は心理学者じゃなくたって、相手の声から色んなことが分かる。
優斗は拓哉の反省も決意も全てが分かった。
「本当に今さらだよね。大会まであと1週間しかないのに……君が入ることで団体戦のメンバーから弾き出される子もいるんだよ?」
いつになく強い口調。
でも何処か拓哉を試しているかの様な。
「そいつの分だってオレが頑張るさ。だから……頼む。」
五秒くらい沈黙して、急に優斗が吹き出して笑う。
「……ぷっ。あははは。」



