Sommerliches Doreiek〜ひと夏の恋〜


ゆっくりと目を明けた拓哉が左手に付けられたソレを見た。

「……ミサンガ?作ったのか?」

「ええ、女子ですから。」

えっへん。と威張ってみた私。

拓哉は鼻で笑った。

「あー、笑ったなぁくそう。ま、それ付けて最後の助っ人業務頑張りなさいよ。」


「……オレは助っ人はもう」

拓哉が言いたいことは分かっていた。

だから私は拓哉の声をかき消すように言うんだ。

「みんな拓哉を待ってる。茂森くんも優斗も私も。」

「…………お前。」

私はカンペーと拓哉の話を知らなかった。

拓哉にとってそれが、僅かばかりの救いになるなんて思ってもいなかったけど、久しぶりに拓哉の笑顔を見る。

「はは。サンキュー。」

そう言って私の方を見ながら拓哉は手を振って帰っていった。

「大丈夫だよ泣かないでほら、私はあなたの笑顔が好き……」

拓哉の濡れて羽ばたけなくなった翼を私は温めてあげることはできそうにないけど。

それでも、私の一言で、些細なミサンガのプレゼントで、小さな小さな雫を払ってあげられたら良いと。そう思った。