「おっ、いたいた。鷲尾、ちょっと良いか?」

カンペーが珍しく放課後に教室に来た。

そこにはベランダからテニスコートを眺める拓哉だけがいた。

「カンペー……何ですか?」

教室に入り、ゆっくりとベランダの扉を閉める。

「テニス部の助っ人が来てくれないって部員に言われてな。ほら、オレ一応顧問だし。」

たぶん全校生徒のほとんどが知らなかった事実。

カンペーはテニス部の顧問でした。笑


「助っ人なら来ただろ?」

拓哉は優斗を見ながら言う。

「白鳥は部員だ、助っ人じゃあない。なぁ鷲尾……そのオレは何処にも、誰にも必要とされていない。って目止めないか?」

拓哉は何も言い返さなかった。

違う……言い返せなかったのだ。きっと。

「人は誰かを必要として、誰かに必要とされなきゃ生きていけないんだよ。お前は自覚がないのかも知れないけど、お前は沢山のやつに必要とされているんだぞ?」

拓哉はゆっくりと、真面目な顔のカンペーを見る。

「……皆が必要としてるのはオレじゃなくて、オレの能力だろ?」

「鷲尾……」

「誰もオレを必要となんかしていない!!テニス部のやつらだって……クラスのやつらだって……琴音だって!!!」

叫んだ拓哉に、カンペーは叫んだ内容以上に驚いていた。

「……あっ!!」

拓哉は顔を伏せながら教室を飛び出していった。