横須賀駅に着いたのは6時を少し過ぎたところだった。

改札を出ると、翔太郎の携帯が鳴りだした。


「誰だろう? あれ?力也だ!」


「もしもし― おぅ…分かった 聞いてみる おぅ…また電話するわ」


「吉川君と約束?あんの?」


「そうじゃなくて… 今ひとみと飯食ってるから来ないか?だってさ!」 


「そうなんやぁ…」


「でっ!どうする?」

「どうするって…」

私は朝のひとみを思い出していた…
ひとみは今日、私が翔太郎と横浜に行くことを知っていたんだ…
知っていて黙っていたんだ…
だから、朝あんなに淋しそうな目で 「がんばっ」
て言ったんだ…
隠していたわけじゃなかったけど…
隠していたのかもしれない…

ごめんね。ひとみ…
ひとみは何でも隠さずに話してくれてたのに…

今日の約束をひとみに話せずにいた自分を責めた。