二月になって、私は寛行さんのうちへお引っ越しをした。

というか――

転がり込んだ?みたいな……。


「むぅぅ。退去の実感はけっこうあったんだけど、入居の実感はいまいち無いかも」

「ひどい……僕なんて二人の新生活への期待で胸が高鳴っているというのに……」

「またそうやって見え透いたウソをしゃあしゃあと……」

「君が味気ないこと言うからさ」

「だってー。アハ体験だったし」

「は?」

「そろりそろり、来る度にちょっとずつ荷物運んできてたでしょお?」

「だから……じわじわ変化していたので、今さら感動も何もない、と?」

「いきなりダンボールの山とかあったら実感わくわくぅーって感じかもだけどねー」

「まあ、君が言うこともわからないではないけれど……」

「でしょお?」

「この子は……」

「ふふーん」

「とにかく……今日からここが君のおうちです。帰るのは“ここ”、いいですね?」

「はーい」

「ふむ。よろしい」