「夏夜!夏夜っ!」 里佳子の声が、なんだか遠くに聞こえる気がする。 私は、夢でも見ているんだろうか。 『春菜(はるな)!春菜っ!』 誰かが、お姉ちゃんの名前を呼んでる。 この声は、誰だろう。 お父さんでも、お母さんでもない。 けど、とても、懐かしいような気がする。 でも、これも夢なんだろう。 20年も前に、死んでしまった人間のことなんて、 誰も、覚えてないはずだもん。