もう一度一からやり直そうと同棲を決め、引越しをしたのがつい3週間前。
まだまだ荷物が片付いていない。
といっても、荷物のほとんどは亮雅のものなんだけど。
「ふたなんていつでもいいだろう」
「そうだけど、もったいないんだよ。お湯が冷めちゃうから」
まだ勤め始めたばかりの私は、夜勤もなく残業もせいぜい30分だ。
亮雅と連続で入れれば効率がいいのに、と考えつつも、
いつも私が先に入り、数時間後に亮雅が入って追い炊きをしている。
「わかった。お湯が冷めなきゃいいんだな」
「うん。そうだけど」
「じゃあ、今日は寄り道はなしだ。家に帰る」
「え?ふたは?」
「冷めないようにしてやるから安心しろ」
なんとなく含み笑いをされた気がしたけど、私はふうん、とだけ答えた。
車の赤いテールランプが、視界のずっと先まで続いている。
渋滞でのろのろと動く車の中で、私だけはいらいらと無縁だ。
飽きるまで、亮雅の横顔が眺められるから。
助手席の窓に映る亮雅の顔を眺めていたら、その手前ににやにやと笑う三十路を超えた女と目が合って自嘲した。

