病院の緩和ケアセクションを立ち上げるのに、まさか自費を投じているなんて知らなかったが、
それよりも母が入院している病院に寄付している事を知ったときの衝撃は、大変なものがあった。
けれど、彼はそれを罪滅ぼしと考えていて、それに対して私がお礼をいう事を嫌うので、私は無言で微笑む。
「そう言えば、藤崎さんも、大橋さんも、もう3年生じゃないか。
来年は試験だろう?勉強ははかどっているかい?」
父親が子どもを心配するような顔の海東は、なんだか可愛いおじさんだ。
「大丈夫ですよ。実習もなんとか無事に終わりそうですし。
でも、そろそろ帰って勉強しないと」
「あぁ、そうだな。もう帰ろう」
慌てて荷物を持ち上げる海東は、やっぱりおかしい。
人って、余裕があるときは全ての事を上手に受け入れることができるのかもしれない。
試験に合格しなくては、という追い込まれた気持ちは確かにあるけれど、
そうじゃなくて。
確実に、一歩一歩大地を踏みしめている、そんな余裕。
忙しくても、辛くても、今の私には心の余裕が存在する。
海東と並んで歩きながら、その横顔に亮雅の面影を重ねるくらいの余裕が--。

