「海東さんこそ、相変わらず質素な暮らしですか?」
医師の住まいとは思えないぼろアパートが思い起こされる。
そうなっている理由を聞いたときは、海東らしいと思うと同時に、やはり彼は尊敬に値する人間なのだと感じたけれど。
「まぁ、あんなところでも住めば都だよ」
病院というところは、きっちりと横のつながりがある。
裁判沙汰になった手術を担当した海東には、出世をあきらめて今の病院に残るか、
遠い田舎街の診療所で一生を送るかしか選択肢がなかったのだろう。
家族のために針のむしろに座る決心をした海東は、表面上離婚をし、その実生活費を亮雅たちに送り続けていたらしい。
残ったお金はというと。
「慈善活動もいいですけど、ほどほどにしないと今に食べるものにも困りますよ」
「ははは。そうかもしれないね」
背中を丸めて苦笑する海東は、多分私が何を言ったところで今の生活を辞めるつもりはないようだ。

