母は、もう何年も精神病棟に入院している。
私が面会に行くと興奮がひどくなるので、次第に足が遠のくようになってしまった。
大人になってから知ったことだが、母は姉が亡くなったショックで精神を病んでしまったらしい。
裁判がさらに母の精神に負担をかけ、使い古したぬいぐるみがすりきれていくように、彼女は徐々に壊れていった。
繰り返される自殺未遂と殺人の衝動。
私たちが寝ている隙に家を放火して、あやうく一家無理心中になりかけたこともある。
裁判所で刃物を振り回し、ついに精神病棟に医療保護入院となった。
医療保護入院とは、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第33条に定められているもので、
精神保健指定医が入院の必要ありと診断した場合、本人が同意しなくても強制的に入院措置となる制度だ。
「お父さんも大変だね」
「父は、新しい奥さんとうまくやってるみたいなので、大丈夫ですよ」
父を恨む気にはなれない。
誰だって幸せになりたいと願うのは自然なことだし、その権利もあるはずだ。
ぼろぼろになった父の心を繕う事ができたのだから、父の相手には感謝したいくらいだ。
ただ、その輪の中に、私の居場所は無いだけのこと。

