私がぽかんとしていたからだろう。
「大谷はさ、一回社会人やってから医者になったから、
あんたの気持ちがわかるんじゃない?」
沢渡が私の気持ちを推し量ったように教えてくれた。
「え?そうなんですか?」
「大谷はバツイチなんだよ。若いときに子ども産んで、育てながら医師免許取ったらしいよ」
声も出なかった。
驚くなんてもんじゃなくて。
だって、あの高慢ちきな大谷が、母親?
「ま、人には色々事情があるからね」
沢渡が遠い目をする。年を重ねた沢渡にも、“イロイロ”はきっとあったのだろう。
「あんたが尊敬してる海東先生だって、結婚して子供がいたのに医学部を受けなおしたっていうしね。
その子どもってのが仲地って、ちょっと前までいた研修医らしいけど。知ってる?」
「あ、はい。みたいですね」
亮雅の名前が出てきて、心臓が止まるかと思った。
傷跡、ちゃんとかさぶたになってくれるのかな。

