突然くびになったため職場に何の挨拶もしていなかった私は、
里佳子の勧めもあり年末に内科外来を訪れ、お世話になったスタッフにお礼を述べて回った。
師長のように、私を見た瞬間に苦虫を噛み潰したような顔をした人間もいたけど、
たいては私の体を心配し(私が体調不良でやめたことになっていたので)、
頑張って、などと言ってくれ。
それが心苦しかったので、実は看護学校を受験するんです、なんて、
一番仲の良かった看護師の沢渡にこっそりと話していたとき、偶然大谷が通りがかった。
私たちの会話が漏れていたのだろう。会話に割って入ってきた。
「あら、あなた。あの生意気な受付の子でしょ?
最近見ないと思ったら看護師になるつもりなの?」
大谷は4月に研修医が入ったばかりの頃、いつまでも始まらない外来をなんとかして担当してもらおうと、私が無理やり呼びつけた医師だ。
男に媚を売る患者からは評判がよく、内部では悪評高い女医である。
彼女にとって私の印象はもちろん最悪なはずなので、てっきり嫌味を言われるかと思ったのに。
「ふ~ん。看護師はかなりハードな職業だよ。ま、やると決めたんなら頑張んなさいな」
「え、あ、ありがとうございます」
なぜか励まされた。

