最後のコーヒーがごゆっくり、という言葉とともに私たちの前に置かれた。
「そんなことないよ」
ミルクを入れてかき混ぜていた私の手が、里佳子の台詞に反応してとまる。
「夏夜はさ、ちゃんとお姉さんの事思ってるよ。そうでなきゃ、ここまで頑張れるわけないよ。
平均勤続年数が1年なんて、あんなひどい部署で、6年も頑張ってるんだよ?」
里佳子はいくつもの言葉を使って私を慰めてくれた。
そのすべてに私は素直に頷くことはできないけれど、彼女の心がうれしかった。
心が洗われたというのは、きっとこんな事を言うのではないかと思うくらい、
私の気持ちはまっさらだった。磨き上げられたグラスのように。
それは本当に不思議な感覚で。
姉の死に関わった全ての人に、なんの憎しみも湧いてこない。
医療事故と断定するだけの話が出なかったせいもあるだろうけど。
「ありがとう、里佳子」
海東が、彼の中の真実を彼なりの言葉で語ってくれたこと。
亮雅が、自分のプライドを捨てて私を海東に会わせてくれたこと。
里佳子が、彼女の母のことを自分がしたことのように感じて私を思いやってくれること。
全てにおいて、憎しみよりも感謝の気持ちが湧き出てくる。

