裏が見える分、患者を拒否する原因が医師の側にあることも少なくないことを知っている。
“遠慮”--海東が口にしたその簡潔な言葉が全てを表すキーワードだ。
寝ているところを起こされるのは、誰だって良い気分ではないだろう。
そりゃあ、建て前では医師になったからにはそれを覚悟しておくのが当然なのかもしれないけれど。
快く急患を診てくれる医師なら、連絡を取りやすい。
だが、自分の手を煩わせるなというオーラを体中から発している者も少なくない。
そういう医師が当番だったとき、看護師は相当に気を使うことだろう。
もしも軽い症状でコールしてしまったら、かなりな勢いで罵倒される。
逆に重い症状でコールすれば、どうしてもっと早く呼ばなかったのかと罵声を浴びる。
病気で病院にかかり、こんな軽いのにわざわざ来なくていい、と医師に叱られた経験のある人はいないだろうか。
もしくは病状が進行していて、どうして早く来なかったのか、と怒られた人は。
それと同じことが、病院の中では毎日のように繰り返されている。
急患を引き受けるかどうかは、医師個人の性格に委ねられることは否定できないだろう。
そして姉は不運にも、勤続10年の看護師である大橋が、コールをためらうほどの人物が当番の日に急変してしまったのだ。

