「春菜さんが来院したのは明け方だったと聞いているが、手術は、確か午後3時くらいに開始だった」
「ずいぶんかかったんですね」
里佳子が途中で口を挟んだ。確かに一体何時間待たされているんだろう。
その間、姉は痛みに耐えていたのだろうか。
海東は、まだ開けられていない缶コーヒーをさかんに両手で転がしている。
「5月の連休中だったからね。救急外来は患者であふれかえってたよ。
交通外傷で運ばれてくる患者さんもいたから、多分平均3時間待ちとかだったんじゃないかね」
仮にも病院で働く私たちには、彼の言うことがすんなりと理解できる。
多分、一般の人が納得できないことだろうけれど。
大きな病院は、何をするにも時間がかかるものだ。
例えばカルテひとつとってみても、小さな診療所なら名前を言えば受付の人間が手を伸ばしてすぐに棚から取り出すだろう。
けれど、大きな病院では同姓同名の人も多く、一日に何千人もの患者が訪れる。
本人のカルテを準備するだけでも、かなりの手間を必要とするのだ。
たったこれだけの話の中ですら、そのほとんどが初めて聞く内容で。
・・私、本当に何も知らないんだ。
なぜか寂しい気持ちが募った。

