何もないから、とここへ来る前に亮雅が買った缶コーヒーをちゃぶ台の上に並べる。
食器棚を見て、その意味がわかった。
多分、コーヒーカップは4つもないだろう。それ以前にコーヒーがないのかもしれないけど。
わずかに光がさしてはいるが、昼間だとは思えない暗さで、当然とばかりに蛍光灯が光っている。
机の周りに4人が座ると、それだけで部屋の温度が上昇したようだ。
海東の隣に亮雅さらにその隣--海東の正面に私、その横には里佳子が。
それぞれ机を取り囲むように腰をおろした。
「夏夜さんは、お姉さんによく似ているね」
「そうですか?」
「あぁ。彼女が生きていればきっと君のようになっていただろう」
懐かしそうに目を細める海東の印象は、いつもと同じ、“思いやりのある海東先生”だ。
姉の事を知っていることだけが、今までと違うけれど。
「いいかげんにしろよ、おやじ。そんなことを聴きにきたわけじゃねぇ」
亮雅の言葉に鞭打たれたように、海東は目を伏せた。
「何から・・・話せばいいかな」

