今まで感じていた全ての熱が、一気に冷えた空気にさらされた。


バンッ!!


突然の物音にどきりとして目を開くと、亮雅は再び私に背を向けていた。


壁にはりつくように置かれた拳。

亮雅が、壁を殴りつけたのだろうか。


「くそっ!」


今度は私の見ている前で、亮雅は扉を叩くように握り締めた拳を壁に激しく打ち付けた。


「亮雅!やめて!」


慌てて亮雅の腕にすがりついた私を見る彼の瞳は、

まるで捨て猫のようで、一瞬、泣いているのかと思った。


「やっぱり、別れよう。別れなくちゃいけないんだ」


自分に言い聞かせているようにつぶやくと、亮雅は私を振り払って扉に手をかけた。


「待って」


驚くほど冷静な私の声は、意識して作ったものではない。