電車に乗って揺られると、役所の立ち並ぶ大きな駅に着く。

そこからバスに乗りかえて15分後、家を出てから約一時間。

やっとハローワークにたどりついた。



・・うわっ、何これ!



世の中が不況で就職難だっていうのは、新聞やテレビで聞いて知っていたけど。

病院に勤めていると、そんなことはどこ吹く風で、全く実感はなかった。

まさか、パソコンで求人の閲覧をするだけに列を成して待たないといけないなんて。


入り口を入ったとたんの人ごみに、私は思わず足がすくんだ。


老若男女入り乱れて大勢の人が窓口に並んでいる。

皆、背中が丸く、疲れたような顔をして。


ここにきてようやく、私は自分が立たされている場所から、崖っぷちまでの距離があまりないことを思い知った。


たいした貯金があるわけではない。

なんとかして今月中に職を見つけなくては、年を越すことができなくなる。


亮雅のことや、姉のこと、心の中に抱えているものはあっても、

そんなことにかまけている余裕はない。


私はぐっと背筋を伸ばすと、唇を引きむすんでその人ごみの中を進んでいった。