いつも並べて置いてある亮雅のコップが、あるべき場所にない。
今朝私が洗って、きちんとしまったはずなのに。
私はぐるりと首をめぐらせた。
食器棚も、テレビもソファも、朝出たときと何の変わりもない。
机に置かれた新聞は朝亮雅が読んだあと、綺麗に畳まれて置かれている。
・・なんだろう。
うまく表現できないが、何かおかしな感じがした。
それは、さっき玄関に入ったときに感じたのと同じもの。
自分がなじんだ感覚と微妙に違う部屋の雰囲気。
鈍感な私は、それを変だと認識しながらも、確固たる理由を得られずにいた。
その理由がはっきりとわかったのは、深夜亮雅から送られた携帯のメールを読んでからだった。
『夏夜へ』
という題名で始まるメールは、まるで業務連絡のような簡素で味気ないものだった。
『そろそろ別れよう。
次に住む場所が決まるまで、そのマンションに住んでて構わない』

