「あれ?藤崎さん?」
救急外来の受付で私に声をかけてくれたのは。
「永井君」
「どうしたの?なんか幽霊みたいな顔してるよ?具合でも悪いの?」
永井がわざわざドアを開けて出てきてくれる。
本当に、永井はとても優しい人だ。この人の彼女になる女性は、きっと幸せに違いない。
「大丈夫。ちょっと忘れ物があって。
あ、そうだ。永井君、仲地先生いらっしゃったかな?」
どさくさにまぎれて、平静を装い永井に尋ねた。
少し考えてから永井は首を振った。
「今日は当直じゃないし、ここでは見てないなぁ。病棟に電話してみようか?」
「いいの、特に用事があるわけじゃなくて。
カルテのことで質問されてたから大丈夫だったか気になって」
夜は病院への入り口が限定される。
永井が見ていないということは、亮雅はここへは来ていないってことだ。
「ありがとう。それじゃ!」
踵を返す私の腕を、あたたかい指が優しく引き止める。
亮雅とは、全然違う、無骨な感じのする指。

