%コード・イエロー%


救急外来の入り口は閑散としていて、赤色灯の明かりも見えない。

どうやら救急車の出入りはないらしい。

自動ドアだけが、私を歓迎してくれる。

そのウィーンという無機質な音に混ざり、ふいに外から人の声が聞こえた気がした。


入り口の脇にある植え込みの影。

その先を少し歩けば、喫煙所やベンチがある。

院内でタバコは吸えないので、雨よけが設置された休憩所があるのだが、

人目を避けたい恋人同士が密会するのは、たいていその手前にある植え込みと相場が決まっていた。


声が亮雅のものだと思ったわけではない。ただ、ほんのわずかな希望を抱いてそっと近づいた。

関係のない人たちなら申し訳ないとは思ったが、それよりも、亮雅に会いたかった。


会ってなにを話せばいいのか、自分の心もはっきりとしないのに。


足先を建物から植え込みに向けて数歩歩けば、暗闇に人影が照らし出される。

と、こちらが相手を視認するより先に、暗闇が口をきいた。


「あ、夏夜ちゃん」


「え?」


こちらからは暗くて顔が見えないが、相手からはこちらの顔が見えるようだ。

でも、私をそんな風に呼ぶのは。


「大橋さん?里佳子のお母さんですか?」