話すべきか、否か。
迷ったのは、数秒。
「私の、姉、です」
水道のレバーを下げて、水音を消した。
「お姉さん?うちの病院にかかっていたのか」
「はい。アッペ(いわゆる盲腸のこと)の手術を受けたんです」
カルテを探すには、どうしも亮雅の協力が必要だ。
もしも、ここで私の罪を病院側にさらされたなら、
それも運命だったと思ってあきらめよう。
物事の区切りをつけるには、何かしらのきっかけが必要だ。
私には、この20年の間、それがどこにもなかった。
多分、私の両親にも。
私はただ、理由がほしかっただけなのだ。
姉の幻影から抜け出して、自分自身の人生を歩めるための納得できるだけの言い訳が。
亮雅が背後にいることがあだになった。
どんな反応をしているのか、確かめられない。

