「ちょっ!待ってください!」
私の態度が気に入らなかったのか、それともそんなこと意に介せずなのか。
亮雅の掌は、あっという間に私の体を蹂躙し始めた。
「先生!」
「ほんと、夏夜は強情だな。ま、どこまで意地がはれるか見ものだけどな」
私の手から離れたグラス。
蛇口から落ちてくる水で、グラスを縁取っていた泡が、一部分だけ流れていく。
流れ落ちた泡が私?それとも頑固にグラスに残った方が?
心が通じあっても、体がうまくいかないことはあったけど、
感じる体に、心が付随していくことは、あるのだろうか。
以前よりも、ずっと自然に亮雅を受け入れている自分が、信じられない。
まるで別の生き物になった気がして。
そのまま身を委ねてしまおうと思ったとき、亮雅の声が私を現実に引き戻した。
「松本春菜っていうのは、夏夜の何?」
そうだった。
私と亮雅は、恋人じゃないんだ。

