反論もできぬまま、仲地の背中を追って玄関まで入った。
それなのに、靴が脱げない。
「やっぱり、失礼します」
さっとドアをすり抜けて、いったんは廊下に出たはずの私の体は、
気づいたら再び玄関の内側に、立たされていた。
もちろん、それが誰の仕業かなんて、ここには一人しかいないのだから説明の必要もないが。
「何?食い逃げ?」
私の腕を捕らえたまま、仲地の口角が上向く。
ドアの内側に、背中を押さえつけられると、ひやっとした感触に身震いした。
そのまま仲地の顔が近づいて、何をされるかわかった私は、瞼を下ろした。
けれど、いつまでたっても、仲地の体温は降ってこない。
そっと目を開けると、至近距離で目が合った。
漆黒の双眸の中に、私の顔がはっきりと映りこんでいる。
・・私、いつもこんな顔してたのかな。
そこにあるのは、ただのみすぼらしい、けれど、はっきりと色気を漂わせる女の表情。
純情ぶるつもりはないけれど、吐き気がする。

